「カメのおんがえし」 9 ~嫁貰い~

村の方へ帰って行った青年は、それから暫く海辺には姿を見せなかった。


〝きっと、お仕事大変なんだー。
お母さんの病気はどうなったかなぁ。 治ったかなぁ。。〟

カメは時々、浜辺よりも やや陸の方まで出ては首を伸ばしながら心配しながら
きっときっと 大丈夫、きっときっと また逢える。。 そう自分に言い聞かせていた。


何度か出向いてるカメの様子を見ていた いつかのスズメが、
カメの前に降りてきた。
“なぁ~、カメさんが待ってるのは、海へ来ていた人間だろ~?”
カメは「うん」と頷いた。

“この間、その人間の家に 二人の人間がやってきてたぞ。
歳いった奴と 女の人だったな~。”

〝女の人?〟
“う~ん。。 まだ若い感じだったよ。 お嫁さん貰うんじゃないかな?”


〝そうかぁ~!そうなんだ~。
だから、すぐには来れなかったんだ。きっと、にいちゃん幸せになるね!〟

“おっかさんも安心できるからだろうな。この間 庭まで出て来れた様だったよ。”

“そう言えば、そいつも安心した顔してたな~。”


スズメ達の話を聞いてる内、カメはまるで自分がそれを見てるかのように
様子を頭に浮かべて・・・、嬉しい顔で ふぅ~っと息を吐いた。。

〝にいちゃんも元気になれたんだ~。よかった~。
お母さんも治ってよかった~。〟


〝ありがとう~~! スズメさ~ん!〟

“いいって~! カメさんは其処まで行くのは無理だから~、
おいら達が行って見て来てあげるからさァー。”

チチチ・・ッと鳴きながらスズメ達はまた空へと飛んで行った。




カメは自分の事の様に嬉しかった。

〝にいちゃんが幸せになれるんだ~。 嬉しいな~ 嬉しいな~。
・・・・・ボクもお嫁さん来ないかなぁ~。。。〟

カメは、ほっと安心したか、
嬉しさのあまり そのまま海まで行って飛び込んでいった。


スィー!スィー!と海中を泳ぐ。
いろいろな大きさと姿様々な魚たちが群れをなして泳いだり、岩場に隠れたり。。

だけど、他のカメらしき影は何処にも無かった。。


〝ボクのお嫁さんは まだ見つからないなぁ~。。
でも、いいや~! その内だよ~~。〟













相変わらず、長閑な日々が過ぎていく。。。
カモメ夫婦も時々降りて来て話し相手になったり・・・、
その日々の中で、今も 青年に逢える日を待っていた。。




「いい気持ちで寝ているな。」

少し首をすくめて、ウトウトしていたら目の前に青年の顔があった。

〝あ・・・!〟



ふたりは今日までの事をいろいろ話した。
「若い女の人」が本当に「お嫁さん」という事も分かった。

「そうか~、鳥たちとも話が出来るんだ~。」
まだ 痩せている気もしたが、以前より少し笑顔が戻りつつあるようだ。
・・・だが、結婚の話になると、笑顔が消え・・・カメは何故だろうと心配した。。


「綺麗な人なんだよ・・・」
青年は一息ついて続けた。。

「働きもんだし、親の面倒もよく見てくれる。
丈夫そうだから子供だって丈夫な子を産めるだろう。 だけど・・・。」

〝だけど? ・・・・・・・・?〟

「好きだな~、この人と一緒に居たいな~という気持じゃないんだ・・・。
否、嫌いじゃないんだよ。まだピンと来ない・・責任だけ感じるけど・・・・・・。。」

カメは、驚いた。
ずっと 嬉しい事なんだと思っていたから。。


「叔父貴が探してくれたんだし・・。オレがまだ祝言のこと考えられないだけだ。。」


青年は、遠くを眺めながら・・、つぶやくように言った。。。





 
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by sino-kotoha | 2013-09-08 11:11 | 創作小説 『カメのおんがえし』 | Comments(0)