「カメのおんがえし」 17 ~言葉~

あれから何日か経った。。
嫁さまが寄る時は、まだ渡せないでいる。



もう そろそろ言葉を交わせてもいい筈なのに・・・と思いつつ、
カメは 爺さんカモメに話してみた。


爺さんカモメは・・・
“数を話したから「トモダチ」と言うんじゃない。 思い出してご覧よ。
あの青年と〝いつ〟話せた?”

〝・・・直ぐだった・・・よ。。 だがら、あの時は 驚いた。〟

“じゃろ?「信頼関係」をお互い持つ者同士だったからじゃよ。
「信頼」って分かるか?
相手の事を「信じる」「信じられる」ということじゃ・・・。 ”

カメは〝うん〟と頷いて聞きながら・・・、
〝だったら・・・、ボクが嫁さまを信じていないって事?
にいちゃんのお嫁さんだもの。「働きもん」でいい人だと思ってるんだけど。〟

ふ~む。。と 爺さんカモメは考え・・・、
“お前さんじゃなく その嫁が まだどこかで「亀は話さない」と
思ってるんじゃろか?”

〝・・・・・。それはボクも・・そうなのかな~と思うよ。。
でも、一回だけ話が分かった時があったんだよ~。 
だけど、いつもは口を動かして何か言ってるだけ。 何も分からない・・・。〟

“わしが その場に居れば、何とか分かるかも知れんじゃがのう~。
今は・・・何も言えんがのう~。”


まぁ~、いいよ、その内だよと、爺さんカモメに言いながらペコっと頭を下げて
「ありがと」と お礼を言った。



〝あ、も・・(ひとつ・・・)。。〟

と言い掛けたが、言葉を呑みこんだ。




この数日間の内、二回ほど 青年に会えた。
時間の余裕が出来たこと、それはカメにとっても安心だった。
何よりもまた「逢うこと出来る」のが嬉しかった。

真珠は・・・ほんの三粒ほどだったけど、青年に渡した。
嫁さまの時は、渡してないので、此処に来る回数も減って来たような気がする。


青年は、これからは所帯も持った事なので、村の寄り合い・祀り事の協力にも
積極的に参加しなければならない。
「また、暫くは来れないよ。  前なら夜でも来るんだけど、今はなぁ~~。」
〝ボクは、いつでもここで待ってるよ~~。〟
カメはそう答えたのだ。

またすぐに逢えるさ~と。。。


〝いっぱい仕事、増えちゃった?〟
「いいさ~。真珠のお陰で、だいぶ楽になってるんだ。」
にっこり答える青年を見ながら、カメは・・
青年が、痩せていたのが解消されてきている事に気づいていた。


〝ほんとうに よかった~。。〟








・・・・・・・・・。

ただ、少し気になる事があった。。


この間の その会話を思い出しながら、海の方を眺めていたカメは・・・、

〝どうして?  ・・・どうしたんだろう?〟

嫁さまの事なら兎も角、
青年とも会話の中に時折、雑音(ノイズ)の様なものを感じた。


また、カメは実はまだ青年に向かっては「にいちゃん」と呼んだ事が無かった。
その「にいちゃん」の横顔を見ていて・・・、初めて呼び掛けてみたのだった。

だけど、全然 気づく様子が無かったのだった。
普段は、振り向いてくれるはずなのに。。


〝ボクの耳がおかしくなったのかな~? それとも・・・
人間に何度もなってる内に、話が出来なくなって来たのかな~~。〟


とっても寂しい気持ちになって来たカメ。。




    最初は、カメだったから話が出来た?
    夜だけと言っても、人間になるから?

    ・・・・・・・・・・・・・・。
    いつか・・・いつか、仮の人の形じゃなくて、
    本当の人間の子になれるのかな~。。

    だったら・・・!
    だったら、にいちゃんの「弟」になりたい!
    だったら、ずっと一緒に居られる!暮らせる!

    でも・・・・・・。
    それは、ならないだろうな。。。   なれたらいいなぁ~~。




寂しい気持ちを消す様に「不思議な事」が起きたら~と考えてみたが、
余計に、寂しさが募って来てしまった。。





〝・・・・・・・。 だめだよ。。 寂しがってたら・・・にいちゃんに恥ずかしいぞ。。〟


〝ちょっと、疲れちゃったのかも~~~。ヨシ!今からたくさん寝ておこう!〟




自分自身に言い聞かせたカメは、首をすくめて 目を閉じてみた。。







目を閉じても、今までの想い出が浮かんでくる。。


〝・・・ボクも・・・早くお嫁さん来てくれないかなぁ。。〟





独り言を言いながら、瞼をギュッと強く閉じたのだった。。。






 
 
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by sino-kotoha | 2013-10-02 15:35 | 創作小説 『カメのおんがえし』 | Comments(0)